中毒事故の問い合わせが多い家庭内の化学製品

食品保存剤、乾燥剤

食品保存剤

菓子類、生めん、おもち、水産加工品等の食品包装内に小さな袋が入っていることがあります。これは食品保存剤(脱酸素剤・鮮度保持剤)というもので食品のカビの発生や食品の変質を防ぐ目的で広く用いられます。

■毒性
脱酸素剤の成分は主に黒い鉄の粉で、鮮度保持剤の成分は主にアルコールを吸着させた白いシリカゲルの粉末です。いずれも毒性の低いものなので中毒の心配はありません。水分をとらせて様子をみます。

■症状
1袋食べた位では、症状は現れません。たくさん食べると吐いたり下痢を起こすことが考えられます。

■事故が起こったら
水分をとらせて様子をみます。

□参考

1.食品包装内には乾燥剤も封入されています。それぞれの目的も成分も違います。包装材料の表示を確かめましょう。

2.なかには刺激のある成分が入っているものもあります。食べると口の中が赤くなってヒリヒリすることがあります。
なめた程度であれば様子をみて、症状があれば受診して下さい。

3.脱酸素剤と一緒に酸素検知剤という錠剤が封入されることがあります。食品包装中の酸素の存在を色が変化することで知らせるものです。ほとんど無毒で中毒の心配はありません。

シリカゲル

シリカゲルは湿気を防ぐ目的で商品包装中に封入されている乾燥剤の成分です。袋入りの小さな粒状や粉末のもの、紙につつまれた錠剤型などの形で広く用いられています。また、家庭で作るドライフラワーの乾燥剤としてたくさんの量が用いられます。

■毒性
消化管から吸収されないのでほとんど毒性はありません。
家庭用の小さな包装単位の量ぐらいなら食べても中毒の心配はありません。

■症状
まれに口の中がただれたり、粒状のものの場合、食道の壁に付着して炎症を起こすことがあります。

■事故が起こったら
コップ半杯位の水分(水、お茶、ジュースなど)を飲ませ、様子をみます。
眼に入った時は、こすらないようにして流水で洗眼します。

□参考

1.乾燥剤には他に毒性の高い危険な生石灰などもあります。表示成分を確認することが必要です。

2.半透明の粒状のシリカゲルがよく用いられますが、吸った湿気の量により、淡青色から淡赤色に変化するシリカ青ゲルが10%程度混ぜてあるものもあります。このシリカ青ゲルには粘膜を刺激する成分が入っていますので、たくさん食べると吐いたり、腹痛や下痢を起こす可能性があります。症状があれば受診します。

3.食品、菓子類用の乾燥剤は粒状の型が多く用いられ、医薬品・健康食品などには錠剤型や板状の型が用いられています。

生石灰

生石灰(せいせっかい)は吸湿力が強いため、湿気をおびやすい煎餅やのりなどの食品の乾燥剤として広く用いられています。
また、水分に触れると発熱する性質を利用して日本酒や弁当の簡易の加温用としても用いられます。

■毒性
水分に触れると熱が発生するので、口の中やのど、食道など触れた部分にやけどを起こす恐れがあります。新しい生石灰ほど危険です。

■症状
食べると口の中、のどがただれて、物を飲み込めなくなることがあります。また胃の灼熱感、ただれ、出血などを起こすこともあります。
眼に入ると痛みやただれを引き起こし、失明することもあります。

■事故が起こったら
少量でも食べた場合、口の中をよく洗い、うがいをさせます。牛乳または卵白水(卵の白身1個をコップ1杯位の水で溶いたもの)を飲ませ、受診します。吐かせてはいけません。
なめた程度なら、応急手当を行った後に様子をみます。口の中がただれたり、痛そうにしていれば受診します。

眼に入った時はすぐに15分以上流水で洗眼した後、受診します。

皮膚についたら、粉をすぐにはらい落として、流水でよく洗い、痛みや赤みがあれば受診します。

□参考

1.包装材料には必ず「生石灰」または「酸化カルシウム」の表示がありますので、確かめましょう。

2.乳幼児の場合、生石灰が付着した皮膚をよだれなどでぬれたままにしておくと、やけどを起こす心配がありますのですぐに洗い流しましょう。

3.新しい生石灰の保管場所に水がもれ、火事を起こした珍しい例も報告されています。

化粧品類

化粧水

化粧水(ローション)には皮膚の殺菌や収れん作用、清涼感を与えるなどの利点があるため、エタノールというアルコール成分が入っています。

■毒性
  アルコール中毒を起こす可能性があります。

■症状
たくさん飲むとお酒に酔った時と同じように顔が赤くなったり、ふらふらしたり、吐くなどの症状が起こることがあります。
眼に入った場合痛みや刺激感があります。

■事故が起こったら
なめたり、1口位飲んだ程度なら、水分をとらせて様子をみます。吐いたり、顔が赤くなって苦しそうであれば受診します。大量に飲んだ時は受診します。

眼に入った時は流水で充分に洗眼します。洗眼後も痛みや充血が残るなら受診します。

□参考

1.一般的には5~30%位のエタノールが含まれています。

2.なかにはアルコールが入っていない製品や、植物エキス配合の製品もあります。これらの製品では中毒の心配はほとんどありません。 

3.アフターシェーブローションやプレシェーブローションにはアルコ-ルが一般的な化粧水に比べてたくさん入っているものもありますので、ひと口以上飲んでいる場合は受診します。

クリーム

クリームは化粧品の中でも子どもの誤飲事故が多い製品です。

■毒性
通常子どもが誤って食べる位の量では、ほとんど問題ありません。食べた量が多いときは、油性成分による症状が出る可能性が考えられます。油性成分の含有量は乳液、保湿クリーム、クレンジングクリーム、コールドクリームの順に増します。

■症状
大量に食べると、油性成分による一過性の悪心、嘔吐、下痢などが生じることがあります。

■事故が起こったら
水分をとらせて様子をみます。大量の場合や、症状がみられる場合は受診します。

□参考

1.薬用クリームには、カンフル(防虫剤の「しょうのう」と同じ成分)が少量含有されているものがあり要注意です。容器の成分表示で確認することができます。カンフルを含有している薬用クリームの場合は、子どもでひと口(5g)以上食べていれば容器を持って受診しましょう。

口紅

お母さんが鏡台に座って口元にもっていくのを見て、真似をして遊ぶうちに食べることが多いようです。子どもの前で化粧をするのは避け、使用後は保管に注意してください。

■毒性
通常子どもが誤って食べる位の量では、ほとんど問題ありません。

■症状
大量に食べると、油性成分により吐き気、嘔吐、下痢などが生じることがあります。

■事故が起こったら
水分をとらせて様子をみます。大量に食べたり症状があらわれるようなら受診します。

香水

香水を飲み込んだときに問題となる成分は、エタノール(お酒と同じアルコールの成分)です。匂いや刺激が強いので、子どもがたくさんの量を飲むことはあまりないようです。

■毒性
なめた程度なら問題ありませんが、大量に飲むと急性のアルコール中毒を起こす可能性があります。個人差は大きいですが、子どもでは大さじ半分~2杯分ぐらい(7~30ml)で中毒の危険があります。

■症状
お酒に酔った時と同じように顔が赤くなり、ふらふらしたり、吐くなどの症状が起こります。重症になると、体温が低下し、意識がなくなります。眼に入ると痛みがあり、充血します。

■事故が起こったら
なめた程度なら、水分をとらせて様子をみます。嘔吐したり、ふらふらして苦しそうであれば受診します。

ひと口(5mL)以上飲んだ場合は、すぐに受診します。眼に入った場合、流水で10分間以上洗い、その後も痛みや充血が残る時は眼科へ受診します。

□参考

1.香水にはエタノールが70%以上、オーデコロンには60%以上含有されています。ウイスキーで約40%ですから、香水はかなり濃度が高いものです。

2.香水と同じ作用をもつ製品:オードトワレ、オードパルファム、シャワーコロン、パルファンドトワレ、フレッシュコロンなど。

マニキュア液、マニキュア除光液

 身近な化粧品類のなかでは最も毒性が高く、また小児の誤飲事故も多いので注意が必要です。

■毒性
少量でも飲んだり、誤って気管に入れると危険です。また蒸気を吸入しても中毒を起こすことがあります。

■症状
飲み込むと、のどの痛み、吐き気、嘔吐、頭痛、ふらつきなどを起こします。また、気管に入ると激しく咳込み、肺炎を起こすこともあります。
蒸気によって眼やのどに痛みを感じたり、長時間吸入すると飲んだ場合と同様の症状を起こすことがあります。
皮膚に長時間付着したままにすると、皮膚炎を起こすことがあります。

■事故が起こったら
吐かせてはいけません。少量(小児ではマニキュア液3ml、除光液1ml)でも飲んだ場合はすぐに受診します。

蒸気を吸入した場合は、きれいな空気の場所へ移動させて様子をみます。眼に入った場合は、流水で10分間以上洗眼します。皮膚についた場合は、石鹸でよく洗います。いずれの場合も、症状が残るようなら受診します。

□参考

1.注意:吐かせることにより、液が気管に入り肺炎を生じる危険があります。特に除光液は、粘度が低くサラサラした液体なので気管に入りやすく、非常に危険です。1瓶に入っている量も多いので注意が必要です。

2.成分にアセトンなどの有機溶剤が使われています。マニキュア液は、溶剤以外に樹脂類なども含まれており、粘ちょう性があります。

シャンプー

お母さんがシャンプーをしているそばで子どもがイタズラしたり、ゴミ箱に捨ててあった空容器を拾ってなめていたりすることがあります。

■毒性
粘膜への刺激作用が少しありますが、通常の誤飲程度では重い中毒は起こりません。

■症状
口の中やのどの痛み、吐き気、嘔吐、下痢、腹痛、おなかが張る、しゃっくりなど。大量に飲んだ場合、1~2時間以内に嘔吐がみられます。

■事故が起こったら
少量誤飲では、牛乳や卵白を飲ませ様子をみます。大量に飲んだとき、または症状のある場合はすぐに受診します。眼に入った場合、流水で10分間洗浄し、その後も痛みや充血が残る時は眼科を受診します。

□参考

1.シャンプーの主成分は、界面活性剤です。

2.フケ取りシャンプーには、殺菌剤(ジンクピリチオン、二硫化セレンなど)が、トニックシャンプーには、かゆみ防止や清涼感を与えるためにメントール、トウガラシチンキなどが配合されています。

3.ベビーシャンプーには、皮膚や眼粘膜に対する刺激の少ない両性界面活性剤が主に使われています。

4.フケ取りシャンプー、ベビーシャンプー、リンスアンドシャンプーも少量ではほとんど心配ありません。ひと口(子どもで5 mL)以上なら受診します。

パーマ液

コールドパーマ液は、第1剤と第2剤があります。第1剤で毛髪を軟化させた後、第2剤でウエーブを固定します。

■毒性
1剤・2剤とも毒性が高く危険です。

■症状
第1剤はアルカリ性による刺激作用があり、口の中からのどの痛み、嘔吐、腹痛、下痢を起こします。

第2剤は、刺激作用による嘔吐、腹痛、下痢を起こします。さらに大量の場合は腎障害や聴カ障害を起こす危険があります。

■事故が起こったら
1剤・2剤とも少量でも飲んだ場合は、すぐに受診します。第1剤の場合は、吐かせずに、牛乳をコップ半分位飲ませて受診します。第2剤の場合は、水か牛乳を飲ませて受診します。
眼に入った場合は、流水で10分以上洗眼してすぐに受診します。
皮膚についた場合は、石鹸でよく洗った後、痛みや赤みなど症状があれば受診します。

□参考

1.注意:受診する際は、成分表示のある容器を必ず持参しましょう。毒性の高い製品ですので、家庭内での保管に十分な注意が必要です。

2.パーマ液は医薬部外品で、第1剤にはチオグリコール酸塩にアンモニアなどのアルカリ化剤が添付されています。

染毛剤

染毛剤には永久染毛剤と一時染毛剤があります。ここでは毒性が高く、誤飲事故の多い永久染毛剤について取り上げます。
永久染毛剤のほとんどは2剤式で、混ぜ合わせて使用します。

■毒性
第1剤:毒性が高く危険です。
第2剤:少量なら心配はありません。

■症状
第1剤:刺激作用による口の中やのどの痛み、嘔吐、腹痛、下痢を起こします。大量の場合、顔やのどが腫れて呼吸困難を起こしたり、腎障害や血液障害を起こします。
眼に入ると結膜や角膜に炎症を起こします。

第2剤:大量の場合、口の中やのどの痛み、吐き気、嘔吐、お腹が張ったような感じがみられます。

■事故が起こったら
第1剤:少量でも飲んだ場合は、吐かせずに、牛乳をコップ半分位飲ませて受診します。
第2剤:2口(10 ml)以下の場合は、牛乳を飲ませて様子をみます。
眼に入った場合は、流水で10分以上洗眼し、第1剤の場合は受診します。皮膚についた場合は、石鹸でよく洗い、痛みや赤みなど症状が残る場合は受診します。

□参考

1.第1剤は酸化染料にアルカリ化剤が添加されたもので、第2剤は酸化剤です。

2.注意:製品によって成分や含有量が違います。受診時には必ず容器を持っていきましょう。
酸化染料と酸化剤の両成分を含む1剤式の永久染毛剤は、2剤式に比べて染料の含有量が多いため特に注意が必要です。

洗剤類

石けん(浴用・化粧用・洗濯用)

固形、クリーム状、液体、粉末など外観は様々です。

■毒性
製品の毒性は高くありません。

■症状
食べた場合、最初は吐き気、嘔吐、のどの痛み、口の中のただれなどがみられます。
腹痛や下痢を起こすこともあります。

■事故が起こったら
ひと口程度なら、牛乳を飲ませ、しばらく様子をみて、症状がでれば受診します。大量に食べた場合は受診します。

□参考

1.石けんの種類には浴用、化粧用、薬用、洗濯用など様々ありますが、毒性的には同じです。

2.認知症の高齢者では数個食べてしまうなど、量が多いこともあるので注意が必要です。

シャボン玉液

遊んでいる子どもが誤飲してしまうことがあります。

■毒性
製品の毒性は高くありません。

■症状
のどの痛み、吐き気、嘔吐、腹痛、下痢などがみられます。眼に入った場合は、痛かったり、涙が出たり、充血したりします。

■事故が起こったら
牛乳を飲ませます。眼に入った場合は、流水で10分間以上洗いましょう。大量に飲んだとき、咳込んでいる、吐いたなど変化がある場合は受診します。
家庭で作ったシャボン玉液の場合、使った洗剤の容器の表示を確認しましょう。対応は、合成洗剤・洗浄剤の項を参考にしてください。

□参考

小さな子どもではストローから吸い込んでしまいがちです。きちんと区別できるまで、シャボン玉遊びはさせないようにしましょう。

合成洗剤・洗浄剤

洗剤、洗浄剤には台所用、洗濯用、浴室用、トイレ用、換気扇用、排水パイプ用など、用途に応じて様々な製品があります。
まず、容器のラベルの品質表示で「液性」を必ず確認してください。台所用、洗濯用、浴室用の洗剤はほとんどが中性か弱アルカリ性です。
トイレ用、換気扇用、排水パイプ用の洗浄剤は、酸性やアルカリ性のものがあり、危険です。
 1.酸性、アルカリ性の洗浄剤
 2.弱酸性、中性、弱アルカリ性の洗剤

1.酸性、アルカリ性の洗浄剤

(トイレ用、換気扇用、排水パイプ用など)

■毒性
組織を腐食する作用が強いので、皮膚や粘膜がひどくただれます。原液や粉末を少しでも口に入れた場合は危険です。うすめた液でも注意が必要です。

■症状
飲み込んだ場合、口の中、のど、食道、胃などの消化管粘膜がただれる可能性があり、重篤な場合は物を飲み込めなくなる恐れもあります。吐き気や嘔吐も起こります。
原液か、少し薄めた程度の濃厚なものが眼に入った場合、失明することもあります。

■事故が起こったら
原液や粉末または濃厚なものを少しでも口に入れたときには、吐かせてはいけません。口をよくすすいで牛乳(あるいは水)を飲ませ、すぐに受診します。
数百倍にうすめた液を飲み込んだ場合は、応急手当をおこなったのち様子をみます。口の中がただれて痛みがあったり、吐き気がするなど異常があれば受診します。
皮膚についたときは、水でよく洗い、痛みがあれば受診します。眼に入った場合は、弱い流水で10分間以上洗ったのち、すぐに眼科医を受診します。

□参考

塩素系の洗浄剤は酸性のものと混ざると、有毒な塩素ガスを発生します。
塩素系の洗浄剤を、ほかの洗剤や洗浄剤と混ぜたり、同時に使用したりしないこと。

2.弱酸性、中性、弱アルカリ性の洗剤

(台所用、洗濯用、浴室用など)

■毒性
毒性は高くありません。ただし、認知症の高齢者が台所用中性洗剤を1本飲んで入院した例もあり、大量に飲んだ場合は危険です。

■症状
吐き気や嘔吐、のどの痛み、口の中のただれ、腹痛、下痢をおこします。眼に入ると、充血や痛みを感じます。

■事故が起こったら
口をよくすすぎ、牛乳(あるいは水)を飲ませます。
原液や粉末を一口程度飲んだ時は、しばらく様子をみて症状があれば受診します。
眼に入った場合は、弱い流水で10分間以上洗ったのち、痛みや充血が残れば受診します。

□参考

塩素系の洗浄剤は酸性のものと混ざると、有毒な塩素ガスを発生します。
塩素系の洗浄剤を、ほかの洗剤や洗浄剤と混ぜたり、同時に使用したりしないこと。

漂白剤

漂白剤には塩素系と酸素系の2種類があります。家庭で衣類や台所用品に多く使用されているものは、塩素系漂白剤では次亜塩素酸ナトリウム含有(強アルカリ性:液体)の商品、酸素系漂白剤では過炭酸ナトリウム含有(弱アルカリ性:粉末)の商品、あるいは過酸化水素含有(弱酸性:液体)の商品です。
まず容器の表示をみて、塩素系、酸素系のどちらに該当するかを確認してください。
 1.塩素系漂白剤
 2.酸素系漂白剤

1.塩素系漂白剤

■毒性
組織を腐食する作用が強いので、皮膚や粘膜がただれます。原液を少しでも口にした場合は危険です。うすめたものでも注意が必要です。

■症状
飲み込んだ場合は、口の中、のどから胃のあたりまでただれて痛くなり、ついには物を飲み込めなくなる恐れがあります。吐き気や嘔吐も起こします。
原液や濃厚なものが眼に入ると、ひどい場合は失明する危険もあります。

■事故が起こったら
原液や濃厚なものを少しでも口に入れたときには、吐かせてはいけません。口の中をよく洗い、牛乳や卵白を飲ませてすぐに受診します。
数100倍程度にうすめた液でも飲み込んだ場合は、応急手当をおこなったのち様子をみます。口の中がただれて痛みがあったり、吐き気がするなど異常があれば受診します。
皮膚についたときは大量の流水で洗い、痛みがあれば受診します。眼に入った場合は、弱い流水で10分間以上洗ったのち、すぐに眼科医を受診します。

2.酸素系漂白剤

■毒性
皮膚や粘膜を刺激するため、原液や粉末あるいは濃厚な液を口に入れた場合は注意が必要です。

■症状
誤って飲むと、口の中やのどの痛み、吐き気や嘔吐、胃の不快感やお腹が張ったような感じ、腹痛や下痢を起こすことがあります。
眼に入った場合は刺激によって充血や痛みを生じることがあります。

■事故が起こったら
誤って飲んだときは、牛乳や卵白を飲ませます。なめたり、うすめた液を少量飲んだ程度なら、様子をみます。原液や粉末をそのまま口に入れたり、症状がある場合は、受診します。
眼に入った場合は、弱い流水で10分間以上洗ったのち、異常があれば眼科医を受診します。

□参考

1.注意:トイレや浴室を掃除する際に、塩素系の漂白剤と酸性の洗浄剤を一緒に使用すると有毒な塩素ガスが発生して、非常に危険です。

2.アルカリ性の商品を飲んでしまった場合、酢やフルーツジュースなど酸性のものを飲ませて中和してはいけません。

義歯洗浄剤(入れ歯洗浄剤)

入れ歯を洗浄するものです。商品の多くは碁石状の錠剤で、コップの水に溶かし、その中に入れ歯をいれて一定時間放置して洗浄します。錠剤のほか、袋入りの粉末の製品もあり、水の中に入れると発泡する製品もあります。

■毒性
製品によって成分は異なりますが、毒性はそれほど高くありません。
主に刺激作用のある漂白成分が間題となります。

■症状
誤って飲むと、口の中やのどの痛み、吐き気や嘔吐、胃の不快感やお腹が張ったような感じ、腹痛や下痢を起こすことがあります。

■事故が起こったら
誤って飲んだ時は、牛乳や卵白を飲ませます。なめたり、少量かじったり、溶かした液を少量飲んだ程度なら、様子をみます。大量に食べていたり、症状がある場合は、受診します。受診する場合は必ず製品の箱を持参するようにしましょう。
また刺激の強い成分が入っている錠剤もあるので注意が必要です。

□参考

1.特に高齢者の事故が多く、錠剤をお菓子と勘違いしてたくさん食べることがあります。溶かした溶液は、きれいな色がついていたり、発泡したりするものもあり、炭酸飲料水と勘違いして飲むこともあります。

2.商品や溶かした液の入ったコップの置き場所に注意しましょう。また、食器のコップではなく、入れ歯洗浄用の容器を決めて使う方がよいでしょう。

殺虫剤、防虫剤

蚊取り線香、蚊取りマット

夏に0歳児、1歳児による誤食事故が多発します。床に置いて使用するので、低い位置に視界がある子どもの目にとまりやすいためです。使用中のものは、熱くなっているのでやけどにも注意しなければなりません。

■毒性
毒性が低いので、なめたり、しゃぶったり、線香ひとかけらやマット1~2枚程度では中毒症状がでる心配はまずありません。

■症状
たくさん食ベると、嘔吐、腹痛、下痢をおこす恐れがあります。体質により皮膚炎などのアレルギー反応を起こすことがあります。

■事故が起こったら
含まれている殺虫剤の量が少なく、また子どもの誤食では大量に食べることはないので、中毒の心配はほとんどありません。症状がなければ家庭で様子をみます。

液体蚊取り

蚊取り線香や蚊取りマットと同様に夏に誤飲事故が多く発生しています。

■毒性
石油系溶剤が含まれているので、飲んだり、吐いたりした場合気管に入りやすく、気管に入ると肺炎を起こすので危険です。

■症状
口の中やのど、胃のあたりが熱くなり、吐き気、嘔吐などの症状が出ます。気管に入ると、ひどくせき込み、顔色が悪くなります。

□事故が起こったら

商品の構造上、大量に飲むことは通常ありませんが、飲んだ様子があるなら、吐かせてはいけません。すぐ受診します。なめた程度なら、24時間様子をみて、せき込んだり、顔色が悪かったり、吐き気、嘔吐の症状があれば、すぐ受診します。
皮膚についた場合はすぐに石鹸で洗って様子をみます。

ホウ酸団子

ホウ酸を含有するゴキブリ用殺虫剤です。家庭でホウ酸と玉ねぎ、牛乳、小麦粉を混ぜて団子状に作ったり、最近では市販品としても数多く売られています。市販品はホウ酸含有量が5~70%(15%の製品が多い)で1個の重さが3g位のものが多く、自家製は通常ホウ酸を50%以上含有し、1個の重さが7~10g位のものが多いようです。

■毒性
ホウ酸の含有量によって異なりますが、市販品の場合、子どもでは1/4個以上食べていると中毒の危険があると考えられます。自家製の団子はホウ酸の含有量が高いので少量でも危険な場合があります。
成人の場合はホウ酸の量として1~3gで症状が出てくる可能性があります。

■症状
症状が出るまでに数時間かかることがあります。吐き気、嘔吐、下痢や激しい腹痛が起こり、皮膚に紅斑が出たり、便が青緑色になることがあります。重症の場合には、けいれんや腎臓の障害を起こします。

■事故が起こったら
なめた程度なら家庭で様子をみます。
大量に食べた場合は受診します。

□参考

1.自家製品で事故が起こった場合、使ったホウ酸の量と何個に分けたかを考え、1個に含まれるホウ酸の量を確認します。

2.“はいはい“をする位の小児の事故が多く、流し台の下など床に置かれていたものを食べてしまいます。また、大人でも作りたての団子を乾燥させているときにお菓子と間違えて食べてしまう事故が起こっているので注意しましょう。

防虫剤

衣類の防虫剤のうち碁石状の製品の成分は、パラジクロルベンゼン、ナフタリン、樟脳(しょうのう)のいずれかです。成分によって毒性や症状が全く異なるので外袋などで確認をすることが大切です。

パラジクロルベンゼン

■毒性
小さなかけら程度ならあまり問題ありません。

■症状
食べて1~2時間後に吐き気、嘔吐、腹痛や下痢を起こします。大量の場合は肝臓に障害が出ることもあります。

■事故が起こったら
小児では碁石状の製品で1/4個までなら家庭で様子を観察します。牛乳を飲ませてはいけません。大量の場合はすぐに受診します。

ナフタリン

■毒性
毒性が高く、かけら程度の量でも危険です。

■症状
吐き気、嘔吐、腹痛や下痢、発熱や発汗、顔面の紅潮が生じます。大量の場合は、血液や腎臓への障害が出ます。症状は1~2日遅れて現れることがあります。

■事故が起こったら
なめただけなら様子をみます。牛乳を飲ませてはいけません。かけら程度でも食べている場合にはすぐに受診します。

樟脳(しょうのう)

■毒性
最も毒性が高く危険です。

■症状
食べて5~90分後に吐き気、嘔吐、興奮状態やめまいを生じます。大量の場合は突然のけいれんや、腎臓や肝臓への障害が出ます。

■事故が起こったら
なめただけなら、様子をみます。牛乳を飲ませてはいけません。かけら程度でも飲んでいる場合にはすぐに受診します。けいれんを誘発するので吐かせてはいけません。

その他

たばこ

子どもの事故の中で最も多いのがたばこの誤食です。「はいはい」をはじめる6ヵ月児から増えはじめ、よちよち歩きをする8ヵ月児にピークがみられます。大人では、灰皿代わりに使ったジュースやビールの空き缶に残っていた液を飲んでしまう事故が多くみられます。

■毒性
乳幼児ではたばこ1本に含まれるニコチンが致死量です。成人の致死量はたばこ2本分に相当します。乾いたたばこでは、含まれているニコチンの全量が吸収されることはあまりないのですが、水に浸っていたたばこやその液にはニコチンが溶け出していて、吸収されやすく、少量でも非常に危険です。

■症状
顔色が蒼白くなり、吐いたり、ぐったりします。腹痛や下痢、よだれが多く出たり脈がはやくなることもあります。ひどい場合は、意識がなくなったり、けいれんして呼吸ができなくなります。

■事故が起こったら
水に浸っていたたばこを食べたりその液を飲んだ場合、あるいは乾いたたばこでも大量に食べた場合はすぐ受診します。
乾いたたばこを少量(乳幼児で2cm未満)食べた時や食べた量の大部分を吐いたことが確認できたら、そのまま数時間、顔色や嘔気など異常がないか、注意して様子をみます。
少しでも異常があれば受診します。4時間以上たっても異常がなければまず安心できます。

□参考

1.ジュースやビールの空き缶を灰皿代わりに使うのはやめましょう。

2.灰皿の後始末だけでなく、新しいたばこも子どもの目につきやすい場所に放置しないようにしましょう。

3.体内に入ったニコチンは24時間経つとすべて体の外に出てしまうので、1日経っても異常がなければ、もう心配はいりません。

体温計の水銀

体温計の水銀は金属水銀で、かつて水俣病で問題になった有機水銀化合物とは違います。

■毒性
金属水銀は消化管からほとんど吸収されないので、中毒の心配もありません。
こぼれた水銀を放っておくと蒸気になり、吸入すると毒性がありますが、部屋の通気性をよくしていればほとんど心配ありません。

■症状
通常、症状は出ません。蒸気を吸入すると発熱、寒気、頭痛、激しい咳、呼吸が困難な状態になります。

■事故が起こったら
飲み込んだ水銀は何もしなくても2~3日で便に排泄されますが、牛乳や卵白を飲ませるのもよいでしょう。
水銀の蒸気により症状がある場合やガラスもいっしょに飲んだ場合は受診します。人によっては、アレルギーによる発疹がでることがあるので、その場合は受診します。

マッチ

マッチの頭には少量の塩素酸カリが主薬として使われています。

■毒性
マッチの頭薬を2~3本食べた程度では心配ありません。幼児で15本以上、成人で100本以上で中毒の症状が出ると考えられています。
すり板をなめても、毒性の低いものが使用されているので問題ありません。

■症状
通常、症状は出ません。大量の場合は吐き気、嘔吐、腹痛、下痢の可能性があります。

■事故が起こったら
水か牛乳を飲ませて様子をみます。大量に食べたり症状がある場合は受診します。

ボタン電池(ボタン形電池、コイン形リチウム電池)

ボタン電池はおもちゃや小型ゲーム、リモコン、電卓、自動車の鍵などに広く使用されています。6ヵ月から2歳頃まではボタン電池を口に入れる事故が多いですが、もう少し年齢があがると鼻や耳に入れる事故も発生しています。

■毒性
飲み込んで食道にひっかかったり、鼻に入れたりして、電池が体内に留まって電流が流れると、周囲の体の組織(粘膜)を傷つけます。電池が食道に引っかかったまま、あるいは鼻や耳に留まったまま、発見が遅れると、症状が重くなる危険性があります。
使用済みの電池でも電流が流れるので危険です。特にコイン形リチウム電池は直径2cm程度と大きく、起電力もボタン形電池の2倍なので、飲み込むと引っかかりやすく、傷害が起こりやすいと考えられます。

■症状
飲みこんだ場合、まれに、嘔吐、胸の痛み、咳、腹痛、下痢などが出ることがあります。症状が重い場合、食道や胃の粘膜に腐食(ふしょく=やけどに似た状態)や穿孔(せんこう=穴があく状態)をおこします。鼻や耳に電池を入れて、鼻の中や鼓膜に穿孔を生じた例があります。

■事故が起こったら
飲み込んだり鼻や耳に入れたりした場合、すぐに受診します。受診時に電池の種類を伝え、同じ種類の電池があれば持参します。
飲み込んだかどうかはっきりしない場合でも、直ちに受診します。

防水スプレー

服や靴や傘などが、雨や雪でぬれたり汚れるのを防ぐために表面にスプレーして使用します。防水/撥水加工剤である樹脂、それを溶かす溶剤、噴射剤からできています。
他の物質のように子どもがまちがえて口にする事故よりも、大人が通常の方法で使用して中毒を起こすケースが多く、特にスキーシーズンや梅雨の時期に多発しています。中には使用方法が適切でない(充分に換気されていない場所で大量に使用する など)ケースもありますが、決められた使用量での中毒例も報告されているので注意が必要です。

■毒性
自動車の中や閉め切った部屋、また換気の悪い場所などで使用すると、気がつかないうちに大量に吸い込んで、入院が必要となるような重い症状のでる危険性があります。

■症状
吸い込んだ場合、多くは使用後1時間以内に、ひどく咳こんだり呼吸が苦しくなるという症状がみられます。また、吐き気、発熱、のどや胸の痛み、頭痛、寒気が出ることがあります。重い症状では肺炎をおこした例があります。

■事故が起こったら
きれいな空気の場所で様子をみます。それでも咳がでたり呼吸が苦しいなどの症状がおさまらないようなら受診します。風邪の症状とよく似ているので、防水スプレーを使ったことを必ず医師に伝えてください。できるだけ商品を持参します。

□参考

注意:スプレーを使用する時は換気のよい場所や屋外で行うなど充分注意しましょう。またウェアを着たままでスプレーをかけてはいけません。

肥料・植物活力剤

主成分は、チッソ、リン、カリウムです。このほか種々の金属を含むものもありますが、とても薄い濃度です。肥料は、粒や錠剤を土の上に置くタイプの製品、液体を薄めて、あるいはそのまま撒く製品など多くの種類があります。植物活力剤は土につきさすアンプル様のプラスチック容器のものがほとんどです。室内やベランダの鉢植えのものを子どもが食べたり飲んだりする事故が多く起こっています。

■毒性
あまり心配ありません。特に植物活力剤は成分の濃度がきわめて低いのでほとんど無害です。

■症状
薄めて使うタイプの液体肥料を原液のまま大量に飲んだ場合は、気持ちが悪い、吐く、お腹が痛い、顔色が悪いなどの影響があるかもしれません。

■事故が起こったら
症状がなければ家庭で様子をみます。

芳香剤

花などのよい香りでいやなにおいを消すものです。トイレ、玄関、自動車内などでよく使われます。ゲル状、粒状、液体、スプレーなどいろいろな形があります。果物や花のにおいがするので、子どもが好奇心を持ったり、高齢者が食品とまちがえたりして、誤飲事故が起こります。高齢者の場合、大量に飲んだり食べたりすることも十分起こり得るので注意が必要です。
また、病院や施設などのトイレでは、芳香ボールを使っていることもあります。芳香ボールの成分は防虫剤のパラジクロルベンゼンです。(防虫剤の項、参照)

■毒性
液体やスプレーの製品にはアルコール類が使われていることがあり、場合によってはアルコールによる中毒の影響がでることがあります。
ゲルや粒の製品はほとんど心配ありません。

■症状
いずれのタイプも大量に食べると、気持ちが悪い、お腹が痛いなどの症状が現れます。また、アルコールの濃度が高いと、口や、お腹が灼けるような感じがしたり、酔ったように顔が赤くなったり、フラフラします。毒性の強いメチルアルコール(メタノール)を大量に飲むと、遅れて失明などの影響が出ることがあります。

■事故が起こったら
ゲルや粒の製品を食べたり、液体製品をなめた程度であれば、家庭で様子をみましょう。
自動車用の芳香剤はメチルアルコール(メタノール)を含有している可能性もあります。液体製品を大量に飲んだ場合は、現物を持って受診します。

紙おむつ

使い捨てのおむつで、赤ちゃんだけでなく、認知症の高齢者が食べてしまう事故もあります。赤ちゃん用のものと、大人用のものがありますが、いずれも、素材は水分を吸ってゼリー状に固まる粒子で「高分子吸収体」といわれるポリマーです。

■毒性
あまり大量に食べると、のどが渇くかもしれません。

■事故が起こったら
水分をとらせて様子をみます。
但し、パルプなどの部分を大きなまま飲み込むと喉につまらせることがあります。気道異物ですから受診してください。

灯油・ベンジン・ガソリン

子どもが灯油ポンプをなめたり、灯油受けにたまった灯油を飲んでしまう事故が、冬だけでなく春や秋の季節の変わり目にも多く起こっています。大人では、自動車の給油タンクからサイフォンの原理でガソリンを移す際、ホースを口にくわえ、吸い上げて誤飲する事故が起きています。べンジンは、懐炉(カイロ)やオイルライターの燃料、しみ抜きに使われています。

■毒性
飲んだり、吐いた時に気管に入りやすく、少量でも気管に入ると肺炎をおこすので、危険です。蒸気を吸って中毒症状がでることもあります。

■症状
飲んだ場合、口の中や喉、胃のあたりが熱くなり、吐き気、嘔吐、下痢などの症状が出ます。
気管に入ると、ひどくせき込み、息苦しくなり、顔色が悪くなります。
蒸気を吸った時は、吐き気、嘔吐、頭痛などの症状が出ます。
眼に入ると、痛みや、ひどい場合には結膜炎や角膜炎を起こします。
皮膚につくと皮疹が出ることもあります。

■事故が起こったら

1.飲んだ様子があるなら、吐かせてはいけません。すぐ受診します。
なめた程度なら、24時間様子をみて、せき込んだり、顔色が悪かったり、吐き気、嘔吐などの症状があれば、すぐに受診します。

2.蒸気を吸ったらきれいな空気の場所で様子をみます。それでも、前記のような症状がおさまらないようなら受診します。

3.眼に入った場合は、すぐに流水で10分間以上洗眼し、それでも痛みや赤みがあるなら眼科を受診しましょう。

4.皮膚についた場合は、石けんで洗って様子をみます。痛みがあったり、皮疹がでれば皮膚科を受診します。