2012年受信報告

公益財団法人 日本中毒情報センター

はじめに

2012年は山菜と誤認して採取したトリカブトを調理して食べた2名が死亡した事故、飲料容器への移し替えによりアルミ缶と業務用洗剤の成分が化学反応を起こし、発生した水素ガスが缶の中で充満して電車内で破裂し乗客の手や顔などにアルカリ性の洗剤がかかった事故など自然毒や化学物質に起因する中毒事故が相次いだ。
また、2011年3月に発生した福島第一原子力発電所事故、さらに中東では神経ガスの製造が懸念され依然として厳しい国際情勢の中、危機管理への意識・関心が高まっている。公益財団法人日本中毒情報センター(以下JPICと略す)は、北朝鮮の2度にわたるミサイル発射事案に対し、不測の事態に備えてロケットエンジンの推進剤に関する資料の整備を行い、ホームページに掲載した。また厚生労働省の委託事業「NBC災害・テロ対策研修」を昨年同様2回主催し、2006年度の開始時から7年間(15回)で157医療チームの研修を終了した。
さて、JPICでは情報提供手段として、オペレーターによる電話応答と、たばこ専用応答電話(テープによる情報提供)、インターネット、書籍、CD-ROMなどを引き続き活用している。2012年のたばこ専用応答電話の利用件数は7,688件(1日約21件)であった。インターネットのJPICホームページへのアクセスは、一般市民向けではミラーサイトも含め約174,000件を数えた。会員向けホームページへのアクセスは約6,000件、企業会員向けは約1200件であった。
本稿の報告対象は、オペレーターによる電話応答での受信記録のみであるが、すべて昨年同様の方法で集計解析し、その結果を以下に報告する。

1. 集計方法

集計の対象は、2012年1月1日から2012年12月31日までの1年間に受信したヒトの急性中毒に関するデータ35,488件である。受信データには一般市民専用電話、医療機関専用有料電話、賛助会員専用電話で受信した記録すべてが含まれる。欠損事項については、不明件数として集計対象に加算して、相対構成比を計算した。なお、対象には「たばこ専用応答電話」の利用件数7,688件は含まない(この件数を加えると2012年1年間にJPICが受信したたばこに関する問い合わせ件数は10,554件となる)。起因物質について、昨年と同様、複数物質を摂取した場合であっても、データ処理上すべて1種として記録し、集計した。

2. 集計内容とその結果

1)都道府県別 受信件数と連絡者のうちわけ

対人口10万比は例年と比べて全国的に大きな変動はみられなかった。また、両中毒110番の位置する関東および近畿からの問い合わせ比率は、例年同様に高かった。

2) 起因物質別 受信件数と連絡者のうちわけ

問い合わせの87%が一般市民からで、医療機関からは10%であった。
例年同様の傾向であるが、いずれの連絡者においても家庭用品に関する問い合わせが最も多かった。とくに、一般市民からの問い合わせは家庭用品が65%と圧倒的に多いが、医療機関からは家庭用品40%、医薬品38%、次いで農業用品、工業用品の順で、様々な起因物質の問い合わせがあった。

3)患者年齢層別 受信件数と連絡者のうちわけ

全体をみると、5歳以下の乳幼児に関する問い合わせが79%を占め、対人口10万比では他の年齢層の50~100倍に相当するという例年同様の構成比を示した。
連絡者別にみると、一般市民では5歳以下の乳幼児に関する問い合わせが85%を占め、医療機関では53%の問い合わせが20歳以上の成人であった。

4)起因物質別 患者の性別と年齢層別 受信件数

昨年同様、家庭用品、医薬品については5歳以下の乳幼児に関する問い合わせが多く、それぞれ82%、80%であるが、農業用品については20歳以上の成人の問い合わせが77%と多かった。

5)発生場所別 受信件数

92%が自宅、知人宅などの居住内で発生しており、例年同様多かった。

6)起因物質数別 受信件数

単独物質の事故が93%で、残りが複数物質の曝露であった。なかには9種以上の物質の曝露による問い合わせもみられ、最大は18種の物質を曝露した問い合わせであった。

7)患者年齢層別 受信件数と発生状況のうちわけ

各年齢層において、誤飲・誤食・誤使用などの不慮の事故が多い。とくに5歳以下の乳幼児ではほぼ100%、65歳以上の高齢者では89%が不慮の事故である。例年同様、年齢層が高くなると故意の事故が増加し、13~19歳では38%、20~64歳では29%が故意の事故である。

8)年齢層別 摂取経路別 受信件数

複数経路の場合は、各経路をそれぞれ1件として計上し、のべ件数で表示しているため、表8の合計値は他の表の合計値より多くなっている。例年同様、5歳以下の乳幼児では経口摂取が92%と多く、他の年齢層に比べると、吸入や眼の事故の占める割合が低かった。

9)起因物質別 年齢層別 曝露から受信までの症状の有無

例年同様、すべての起因物質において、12歳以下の小児の有症状率は3割未満であったが、13~64歳の年齢層では5割を超え、最も有症状率が高かった食品・その他は89%であった。

10)起因物質分類別 受信件数上位品目

 (1)誤飲・誤食等について
5歳以下の乳幼児では化粧品による事故が最も多く、次いでたばこ関連品であった。各起因物質分類において、上位品目となっていた起因物質の順位については多少変動があるものの、起因物質の品目については例年同様で大差はなかった。

 (2)自殺企図について
自殺企図では例年同様、医療用・一般用医薬品の中枢神経系用薬が全体の約半数を占め、家庭用品の洗浄剤、農業用品の殺虫剤がそれに続いている。

11)品目別 受信件数

大分類別に、品目別受信件数を受信件数の多い品目順に示した。
全体的に大きな変動はみられなかった。家庭用品では、たばこ関連品が昨年に引き続き減少した。新しいタイプのトイレ用洗剤による事故の増加を反映し、酸・アルカリに分類されないトイレ用洗剤の問い合わせは昨年に引き続き増加した。
また、乱用薬物,ストリートドラッグに関する問い合わせは昨年に引き続き増加し、新たに品目として追加した、いわゆる脱法ハーブ(Smokable herbal mixtures)の問い合わせは昨年とほぼ同じであった。

12)発生時刻分布

中毒事故の発生時刻の傾向を把握する目的で作成したものである。
JPICへの問い合わせ状況からみる限りでは、事故発生は例年同様、午前8時から午後10時の生活時間帯に多く、ピークは午前9時から午前10時台と午後6時台となっている。

13)動物の中毒に関する受信件数

動物の急性中毒に関する問い合わせは530件であった。


(1)起因物質別 受信件数と連絡者のうちわけ
医療機関からの問い合わせは年々減少傾向にある。

(2)起因物質分類別 受信件数上位品目
動物では殺虫剤、乾燥剤・鮮度保持剤、中枢神経系用薬、植物などの問い合わせが多かった。

おわりに

問い合わせがあった起因物質や事故発生状況の傾向は、例年とほぼ同様の結果を示した。違法ドラッグ(いわゆる脱法ハーブ)に関して、厚生労働省は、平成25年2月に指定薬物の包括指定を初めて行い、規制を強化した。脱法ハーブを使用後に死亡したという症例報告もあり、引き続き、脱法ハーブの問い合わせ件数の動向に注視したい。
JPICは昨年4月に公益財団法人に移行してから1年を迎えた。昨年から後期臨床研修医向けに中毒110番体験研修を開始し、中毒110番での電話対応業務の他、JPICの事業内容や整備しているデータベースの使用方法などの講義を行っている。プレホスピタルからの中毒診療の流れを理解し、幅広い中毒の知識と対応スキルを身につけることができる全16時間のカリキュラムとなっており、是非多くの先生方にご参加頂きたく、ご案内する次第である。(本研修の問い合わせ電話番号029-856-3566)
最後に中毒110番の問い合わせ電話番号およびホームページアドレスを紹介する。

[電話]
・一般市民専用電話 (情報提供料無料、通話料のみ)

       (大 阪) 072-727-2499
             365日  24時間対応
       (つくば) 029-852-9999
             365日  9~21時対応

・医療機関専用有料電話 (情報提供料:1件につき2,000円)
       (大 阪) 072-726-9923
             365日  24時間対応
       (つくば) 029-851-9999
             365日  9~21時対応

・賛助会員専用電話 
       賛助会員(医療従事者、医療機関、行政など)にのみ電話番号を通知する、年1回更新

・たばこ専用自動応答電話 (情報提供料無料、通話料のみ)
        072-726-9922
        365日  24時間対応
       (テープによる情報提供)

[ホームページ]
http://www.j-poison-ic.or.jp
(ミラーサイト http://wwwt.j-poison-ic.or.jp

なお、賛助会員、ホームページ会員についての資料請求は、以下へFAXにてお申し込み下さい。
公益財団法人 日本中毒情報センター
本部事務局 FAX:029-856-3533