1992年受信報告

公益財団法人 日本中毒情報センター

1)都道府県別受信件数

1992年度総受信件数:34,216件(1991年度32,598件の4.7%増加)。対人口10万比:平均27件,最高50件(茨城県,大阪府)-最低6件(青森県,山形県)。関東・近畿・東海の3地域(合計26,635件)の全国構成比:78.5%,対人口10万比:36件。海外からの受信件数が増加(秋田県,佐賀県の一般市民からの受信件数に近い),主としてアメリカ,イギリス,オーストラリア,台湾,韓国など。海外その他の施設からの1件は,バングラデシュ大使館駐在医務官からのもの(同国駐在企業の派遣家族の子女,1歳による殺蟻剤「アリの巣コロリR」摂取事故)。
参考:アメリカの1991年度総受信件数の対人口10万比:全国平均920件(最高1770件-最低330件)

2)電話連絡者別起因物質(大分類)別構成比

1991年度に比べて一般市民からの受信件数のみに増加(6.2%)が認められ,とくに医薬品の増加(8.5%)が目立つ。医薬品では,一般市民からは一般用の方が,医療機関からは医療用の方が問い合わせが多くなっている。農薬では,医療機関からの問い合わせが一般市民からの約5倍多いのが注目される。

3)電話連絡者別年齢分布

一般市民からの受信件数は5歳以下の乳幼児による摂取事故が全体の92%を占め,医療機関他からのケースと異なる。医療機関他からは20~59歳の成人層がかなり多く,65歳以上の高齢者も一般市民に比べて件数,構成比ともに多くなっている。これらは受信時有症率とかなり相関している(表11)。対人口10万比受信件数では,1歳未満が850件で成人層に比べて208倍となりきわめて高い件数である。1~4歳でも350件で86倍である。両層を合わせた5歳以下の乳幼児では447.7件となり,成人層の約100倍の摂取事故が発生していることになる。

4)起因物質別年齢層および性別比較

一般市民からの受信件数について起因物質別に年齢層間の比較をすると,農薬,自然毒を除く家庭用品,医薬品,工業用品などによる摂取事故が5歳以下の乳幼児で80~95%を占めている。またこれらでは男児が女児よりも多い。

医療機関からの件数では,家庭用品を除けば20~59歳の成人層の摂取事故が40~66%を占め,一般市民と異なる。これらの結果は1991年度と全く同様の傾向である。

5)品目別 受信件数

6)起因物質別年間受信件数によるベスト5一覧表

1991年度と多少の順序の移動があるがほぼ同様である。

7)年齢層別発生動機比較

一般市民からの問い合わせのケースでは,どの年齢層においても不慮の事故によるものが圧倒的に多い(99%)。医療機関他では,成人層において意図的摂取が50%となる。しかし高齢者層では不慮の事故が約75%となる。

8)年齢層別摂取経路

一般市民,医療機関ともに経口摂取が最も多い。ただし5歳以上では経口以外の摂取がかなり多い。

9)摂取経路別発生動機

医療機関では経口および吸入のみに自殺などの意図的摂取が多い(26%)。

10)発生場所と発生動機の関係

一般市民および医療機関ともに,居住内が最も多い。職場での事故はほとんどが労災対象である。

11)年齢層別症状の有無の比較

一般市民および医療機関ともに,受信時有症状率が5歳未満の乳幼児ではきわめて低く,5歳以上では20%以上と高くなる。とくに成人層で最も高い(45~70%)。

12)起因物質別有症状率

一般市民では,家庭用品と医薬品のケースの受信時有症状率が5~10%で低い。医療機関では全般に有症状率が高い(20~80%)。

13)年齢層別回答区分(一般市民)

「直ちに受診」を要するケースが,高齢者を除き各年齢層とも1991年よりも多い(15%)。なお,医療機関に対する回答区分は,すべてJPICの提供した情報にもとづいて医療機関の責任において処置がおこなわれるため「情報提供」のみとなる。