2024年受信報告

公益財団法人 日本中毒情報センター

患者年齢層を10歳区分で集計した表を会員限定で公開しています。

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はじめに

公益財団法人日本中毒情報センター(以下JPICと略す)では、中毒110番でのオペレーターによる電話応答のほか、たばこ専用自動応答電話、Webサイト、書籍などの種々の媒体を通じて情報提供を行っている。
本稿では、中毒110番での電話相談の受信記録を中心に集計・解析し、その結果を報告する。

1. 中毒110番受信記録

(1)集計方法

集計の対象は、2024年1月1日から2024年12月31日までの1年間に受信したヒトの急性中毒に関するデータ22,475件であり、すべて昨年同様の方法で集計・解析した。データには一般専用電話、医療機関専用有料電話、賛助会員専用電話で受信した記録すべてが含まれる。欠損事項については、不明件数として集計対象に加算して、相対構成比を計算した。起因物質について、昨年同様、複数物質に曝露した場合であっても、データ処理上すべて1種として記録し、集計した。また、ペットなどの動物による急性中毒に関する相談は298件であり、別途集計した。なお、各表中の数値は表示単位未満を四捨五入しているため、合計が一致しない箇所がある。

(2)集計内容とその結果

1)都道府県別 受信件数と連絡者のうちわけ

対人口10万比は例年と比べて全国的に大きな変動はみられなかった。また、大阪およびつくば中毒110番の位置する近畿および関東からの相談の比率は、例年同様に高かった。

2) 起因物質別 受信件数と連絡者のうちわけ

一般市民では、家庭用品が53%と最も多く、次いで医薬品が36%であった。医療機関では、医薬品が49%と最も多く、次いで家庭用品が34%であった。

3)患者年齢層別 受信件数と連絡者のうちわけ

全体では5歳以下の相談が65%を占め、例年同様の構成比を示した。
連絡者別にみると、一般市民では5歳以下の相談が70%を占め、医療機関では成人(20~64歳および65歳以上)の相談が53%であった。その他では、学校(保育所等を含む)および高齢者施設からの相談が多く、年齢層別では5歳以下が28%、65歳以上が27%であった。

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4)起因物質別 患者の性別と年齢層別 受信件数

患者の性別では、家庭用品、医療用医薬品、一般用医薬品、農業用品、自然毒、食品,他による成人の事例において、男性より女性の方が多かった。この傾向は医薬品において特に顕著であり、医療用医薬品の20~64歳は、女性が男性の2.8倍、また一般用医薬品の13~19歳は、女性が男性の2.7倍であった。
年齢層別では、家庭用品、医療用医薬品、一般用医薬品、自然毒、食品,その他はいずれも5歳以下の相談が6割程度を占めたが、農業用品は成人が8割、工業用品は成人が5割であった。

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5)発生場所別 受信件数

例年同様、自宅や知人宅などの居住内が89%と最も多かった。

6)起因物質数別 受信件数

単独物質の事例が90%で、残りは複数物質の曝露であった。最大は20種の医薬品を摂取した相談であった。

7)患者年齢層別 受信件数と発生状況のうちわけ

各年齢層において、誤飲・誤食・誤使用などの不慮の事故が多かった。とくに5歳以下ではほぼ100%、65歳以上では92%が不慮の事故で例年同様の傾向を示した。

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8)年齢層別 摂取経路別 受信件数

 複数経路の場合は、各経路をそれぞれ1件として計上し、のべ件数で表示しているため、表8の合計値は他の表の合計値より多くなっている。例年同様、5歳以下では経口摂取が87%と多く、他の年齢層に比べると、吸入や眼の事例の占める割合が低かった。

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9)起因物質別 年齢層別 曝露から受信までの症状の有無

すべての起因物質において、5歳以下の有症状率は3割未満であった。一方、成人の有症状率は高く、20~64歳では農業用品、自然毒、工業用品、食品,その他で7割を超えていた。

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10)起因物質分類別 受信件数上位品目

 (1)誤飲・誤食等について(表10-1)
 表10-1は、誤飲・誤食以外に、誤使用や医療上の事故なども含む。
5歳以下において、家庭用品では化粧品による事故が最も多く、次いでたばこ関連品であった。医療用医薬品と一般用医薬品ではともに中枢神経系用薬が最も多かった。6~19歳では医療用医薬品の事故が多く、薬を服用する際に誤って親や兄弟の薬を飲んだ、量を誤ったなどの医療上の事故が9割以上を占めた。そのほかの各起因物質分類において、多少の変動はあるものの、全体の傾向は例年同様で大差はなかった。

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 (2)自殺企図について(表10-2)
例年同様に中枢神経系用薬の割合が高く、医療用医薬品の中枢神経系用薬が42%、次いで一般用医薬品の中枢神経系用薬が16%であった。

11)品目別 受信件数

大分類別に、品目別受信件数を受信件数の多い品目順に示した。

家庭用品のうち、たばこ関連品では、加熱式たばこ(吸い殻、浸出液含む)の相談件数が1,245件と、たばこ関連品の75%を占めた。その他、保冷剤の相談が増加傾向にあり、2022年574件、2023年687件から2024年は711件に増加した。711件のうち、主に食品の保冷に使用される不凍液を含まない製品(カチカチに凍るタイプ)が501件と約7割を占め、不凍液を含むソフトタイプの製品が153件、その他冷却シートなどの相談があった。また、コンタクトレンズ用品は近年増加傾向にあり、2024年は164件であった。 164件のうち、眼に曝露した52件では、消毒剤を中和せずに使用した、すすがずに装着したなど使用方法を誤ったため眼に曝露した例が多く、51件に眼の痛みや充血などの症状が出現した。

医療用医薬品では、レンボレキサント、スボレキサント、ラメルテオンなどの不眠症治療薬が2022年51件、2023年59件から2024年74件と増加した。
一般用医薬品では、デキストロメトルファン含有鎮咳薬による自殺企図や乱用などの故意の事例が、2022年28件、2023年70件と増加傾向にあったが、2024年は53件と2023年と比べ減少した。そのうち48件は、2021年8月に発売された、医療用医薬品と同量を含有する鎮咳剤であり、年齢層は10歳代が38件と多かった。また、動物用医薬品に関する相談が例年100件程度あり、2024年は98件であった。そのうち小児の誤飲が71件、イヌやネコなどペットの薬を自分の薬と誤認して服用したのが19件であった。

食品、その他では、2023年に増加したカンナビノイド関連製品の問い合わせが、2023年38件から2024年10件と減少した。

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12)発生時刻分布

中毒の発生時刻の傾向を把握する目的で作成したものである。JPICへの相談状況からみる限りでは、発生は例年同様、午前7時から午後10時の生活時間帯に多く、ピークは午後5時から午後8時台となっている。

13)動物の中毒に関する受信件数

動物の急性中毒に関する相談は298件であった。

(1)起因物質別 受信件数と連絡者のうちわけ(表12-1)

動物では家庭用品が52%と最も多く、次いで医薬品が29%であった。

(2)起因物質分類別 受信件数上位品目(表12-2)
品目別では、植物、殺鼠剤、殺虫剤などの相談が多かった。

2.たばこ専用自動応答電話

2024年のたばこ専用自動応答電話の利用件数は2,299件(1日約6.3件)であった。この件数を加えると2024年1年間にJPICが受信したたばこに関する相談件数は3,958件となる。

3.日本中毒情報センターWebサイト

2024年のアクセス件数は約25万件で、そのうち医療関係者向けページへのアクセス件数は約2万件であった。コンタクトレンズケア用品、スイセン、硫化水素、防水スプレー、ワンプッシュ式殺虫剤、化学発光製品(ケミカルライト)、ムカデ、ギンナン、灯油、帰省先での子どもの誤飲事故などについて中毒事故予防のため啓発資料を定期的に掲載した。

おわりに

2024年は問い合わせ数が大きく増加したものはなかった。2023年に増加した若年者による一般用のデキストロメトルファン含有鎮咳去痰薬の故意の事例は若干減少したものの、一定の問い合わせはあり、今後も注意が必要である。カンナビノイド関連製品の問い合わせの減少は、包括指定を含めた規制強化の効果だと考えられる。JPICでは引き続き新しい製品による事故動向を速やかに察知し、製造事業者や行政との連携をさらに強化して事故情報を共有するとともに、WebサイトやXで事故防止につながる情報発信を的確に行っていきたい。
最後に中毒110番の電話番号およびWebサイト、Xアドレスを紹介する。

  [電話]
    ・ 一般専用電話(情報提供料無料、通話料のみ)
       365日  24時間対応
       (大阪) 072-727-2499
       (つくば)029-852-9999

    ・ 医療機関専用有料電話(情報提供料:1件につき2,000円)
       365日  24時間対応
       (大阪) 072-726-9923
       (つくば)029-851-9999

    ・ 賛助会員専用電話 
       賛助会員(医療従事者、医療機関、行政など)にのみ電話番号を通知する、年1回更新

    ・ たばこ専用自動応答電話(情報提供料無料、通話料のみ)
       365日  24時間対応
        072-726-9922

 [Webサイト・X]   Webサイト:https://www.j-poison-ic.jp
   X:https://x.com/JPIC_Poisoninfo
 なお、賛助会員についての資料請求は、以下へお申し込み下さい。
    公益財団法人 日本中毒情報センター
     本部事務局 FAX:029-856-3533
           E-mail:head-jpic@j-poison-ic.or.jp